人生初めての挫折と決心
英語との付き合いは突然始まりました。父親のイギリス転勤に家族で帯同することが決まったのです。そのわずか2週間後の14才の春、私は転校先の現地校の寮で右も左もわからないまま佇んでいたのでした。
日本での「英語」は得意だと自負していた私が味わった人生初めての挫折。学年を一つ下げました。そして大体は理解できても話せない。言葉が違うせいで得意なはずの事も思うようにいかない。悔しかったです。そしてそこからの3年間を「誰よりも英語が上手くなることに費やす」決心をしました。負けず嫌いですね（笑）

英語を身につける方法は人それぞれだと思います。私の場合、当時は無我夢中だったので意識していませんでしたが今思うと膨大なインプットをしました。とにかく英語を「読む」「聞く」ことです。
クラスメートとの会話も話すより真剣に聞き耳を立てていたくらいだと思います。テレビドラマもたくさん見ました。ロンドンが舞台のEastendersを見た次の日先生に「ヒロコ、昨日Eastenders観たでしょ。Cockneyになってる」とジョークを言われるような日々でした。英文学の授業の最初の課題本は確かShakespeareのMacbethやJ.B.PriestleyのAn Inspector Callsだったでしょうか。現代英語も危ういのにまさかの古典に劇。「とにかくやれ！」と自分に言い聞かせて何十時間も読んでいました。そして英語のテストは課題に沿ってエッセイを2時間ひたすら書くこと。春休み返上で過去問のエッセイをひたすら書き続けました。

そして時々ふと思い返しては「まぁ前より良くなってるかも」と思う日々。英語の上達って地味です。
その学習の効果は徐々にアウトプットにも反映され始めました。正直それから全てが楽しくなりました。「普通」にコミュニケーションを取れるのがどれだけ有り難いか。たくさんのバイトを通じて様々な人からたくさんの事を教えてもらいました。
大学ではチベット解放運動サークルリーダーになりコンサートやデモを企画したりプレスリリースを書いたりして、自分の言葉が人に届く素晴らしさを実感しました。地味〜に数学を勉強した後は火山灰の研究を通じてかけがえの無い経験をしました。どれも英語ができたおかげです。

語学取得の鍵はモチベーションとまねをすること

こうして体当たりで英語を学んだ私の英語習得法はあまり参考にならないかもしれませんが言えることがあります。
まず「モチベーション」の大事さ。
悔しい思いのような感情的なモチベーションの底力はすごいです。「しなきゃいけないから」だけだったらダイエットだって新年の抱負だって成功しているはずです。生の英語に触れる機会を自ら作り、自分を奮い立たせることも必要です。

そして「まね」の重要さです。
自分の言いたいことが言えないという声をよく聞きますが、するべき事はおそらく「すでにどこかで聞いているものをそのままもしくは応用して正しいタイミングで言う」ということです。私たちはこれを繰り返し日本語を話せるようになった、そう思いませんか？聞いた事のある表現を「こういう意味なのか？こういう言い方か？ここで使うのか？」と模索しながら使い合っていたら心の中でガッツポーズ、これをひたすら繰り返していた気がします。
まねに付随して言えるのは、まねすることを前提にインプットを行うことです。「Yes」と答えて会話が終了してしまう方、海外ドラマではどんな状況で何と返事していますか？「Thank you」の2単語で本当に感謝が伝わっていると思いますか？実際は言葉を重ね、言い方やジェスチャーも含めて伝えていませんか？何となくインプットするのではなく、「前置詞が苦手だから前置詞を意識しながらリーディング」「相槌がyes/noだけで会話が弾まないから表現を広げるためにドラマを見る」。常に自分の課題に向き合う事です。

…と先生ぽい事言ってますが、普段はギリシャの離島でカフェをやっています。院生の頃火山の研究で訪れた離島での田舎暮らしももう15年目です。夏の6ヶ月はカフェ、冬の6ヶ月はギリシャ語を習得するのにも前述した経験は役に立ちました。あとはどの言葉でも同じプロセスを繰り返すだけなんですね。世界各国から訪れる観光客と英語でコミュニケーションをとるのは本当に楽しいです。同時にカタコトでもその人の言語を話せるとどれだけコミュニケーションがスムーズに行くかには、今でも驚くばかりです。言葉ってすごい、と。